現在一般に製作される工芸ガラスには、高温度におけるガラスの流動性を活かした美しい吹きガラスやカット、グラビール、サンドブラスト、エッチングなどの機械的または化学的な加工を施した工芸品やステンドグラスなどの色調の変化を主体とする工芸ガラスなど、その特徴および製作方法において異なる各種のものがあります。
これら工芸ガラスの素地としては、工芸的効果を目的として、各種の透明ガラス、着色ガラスが使用されており、したがってガラスの組成範囲および技法の応用範囲も広いが、ガラス自体が持つ最大の特徴である無色透明性や輝きの点などで優れた性質を有するクリスタルガラスがその中心となっています。
工芸用ガラスには、透明性が秀でていること、表面光沢や輝きが美しいこと、加工しやすいこと、打音が清澄であることなどの特徴が要求されます。これらの特徴を満たすものとして現在工芸ガラスに最も使用されるものは鉛クリスタルです。工芸ガラス器にはカットや研磨加工を施す場合が多いのでガラスの質が適度に軟らかいことが望まれます。多量の酸化鉛をガラスの成分として加えると硬度が下がり、加工しやすくなるので、一般に高級なカットグラスなどには、鉛クリスタルが多く使用されています。またこの酸化鉛を多量に加えたガラスは屈折率や分散が大きくなり、輝きが増して優美な工芸ガラスができます。